京大2021春「統計学の哲学」第2回講義レジュメ

2回目コメント

統計学の哲学とは

• 伝統的トピック
  • 確率の解釈（subjective, objective, logical）
  • Bayes vs Frequentism
  • 統計・確率パラドクス
• 本講義の主眼
  • 帰納推論としての統計学（ヒューム問題）
  • 統計学の存在論的・認識論的含意

帰納の問題（統計学と存在論）

• 記述統計

  • 18世紀、「印刷された数字の洪水」（Hacking）

• データ「可視化」の方法としての統計量

  • 標本平均、分散、共分散、相関係数
  • データの本質・関係性・法則を顕にする

• 実証主義

  • 形而上学的概念の追放
    • 神、本質、エンテレケイア、力、原子などなど
    • 経験に基づかない（感覚データへの一意的な翻訳の不在）
  • 科学の目的＝（センス）データの要約
    • 法則＝様々な経験を関連付け、整理すること
    • 「思考の経済（economy of thought）」
  • Karl Pearson
    • Grammar of science：因果概念の追放 → 相関係数
    • 科学の厳密な「文法」としての（記述）統計。

• 経験主義の伝統（Empiricism: Locke, Hume, Berkeley）

  • 観念の内にないものはない
  • すべては感覚から組み立てなければならない
  • データ／感覚一元論

• David Humeの帰納の問題

  • 「これまで太陽は東から登った」「だから明日も太陽は東から登るだろう」
    • これはどのように正当化されるか？
  • 帰納推論は、暗黙裡に「自然の斉一性」（Uniformity of Nature）を前提している
    • Uniformity of nature: "instances of which we have had no experience, must resemble those of which we have had experience, and that the course of nature continues always uniformly the same" (THN, 89)
    • しかしその想定は知性や理性からは擁護できない

• →　帰納にはgiven/dataを超えた「存在論的」前提が必要

  • e.g. Berkeley：「神」の視点
  • 現代統計学では、「自然の斉一性」はどのように理解・推論される？
  • → 統計学における存在論と認識論

認識論としての統計学

• 認識論
  • 知識とは何か: True justified belief.
  • ← 17世紀：懐疑論への応答としての認識論的転換（Descartes）
  • 信念は何によって正当化されるのか？正当化はなぜ真理をもたらすのか？
• Views on justification
  • 内在主義（internalism)
    • ある信念が正当化されている = 他の信念から正当化される
  • 外在主義（→Reliabilism）
    • 基礎的信念が正当化されている = その信念が外界との適切な関係を持っていること
  • プラグマティズム（Stich）
    • 一つの「道具、技術、習慣」としての認識論